クラウドへの移行によって顧客エクスペリエンスの向上を実現
ロイヤルティを高め、顧客維持率を向上させたいなら、顧客データをクラウドに移行しましょう。
ついに、困難な作業へと乗り出さなくてはならないときが来ました。
米国を拠点とするある経費管理企業は、何年にもわたって旧式のElasticsearchオンプレミスバージョンを使用し続けていましたが、社内のITインフラをモダナイズする必要がありました。そして、v 2.3.4からv 7.9に移行する際に、今こそがクラウドへと移行する最適なタイミングではないかと考えました。
しかし、それは簡単なことではありませんでした。同社は買掛金自動化に関する世界的リーダー企業であり、カスタムの検索機能を使用して検索する領域が10個もある複雑な環境を採用していました。また、Elasticsearchのベースとして使用しているLucene構文が、5年間で何度も変更されていました。
同社は、ベイエリアを拠点としたソフトウェア開発企業のSoftjournのサポートを受けながら、1年かけてAWSへと移行するプロジェクトを開始しました。
重要な疑問は次の通りでした:顧客エクスペリエンスは維持されるのか?検索の速度と正確性は維持されるのか?同社の迅速な対応と信頼性は維持されるのか?
答えはノーでした。維持されるのではなく、すべてが向上しました。
同社の要望により、Softjournはアップグレード前後の検索パフォーマンスを比較するカスタムツールを構築しました。クラウドへと移行した後、検索はより速くなり、結果はより正確になり、環境はさらに堅牢になりました。
「クラウドへの移行により、より優れた安定性をユーザーに提供できるようになりました」と、移行をサポートしたSoftjournのソフトウェアエンジニア、Yuriy Mitsiuk氏は言います。「クラウドに移行することで、パフォーマンスに関する多数の問題を解決できました」。
クラウドベースであることの利点はその他にも、新機能やバグ修正の展開の迅速化、カスタマーサポートの対応の迅速化、サードパーティーとの統合の簡易化、ダウンタイムの削減などが挙げられると、CensusのCEO、Boris Jabes氏は言います。同氏の会社は、クラウドベースのデータウェアハウスを使用して組織のデータを簡単にSalesforce、Zendesk、およびMarketoといったSaaSアプリケーションと統合できるようにしています。
「これらの要素は必ずと言っていいほど顧客の満足度やロイヤルティ、売上の向上につながります」と同氏は述べています。
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クラウドで鋭いインサイトを入手し、優れた意思決定を実行
クラウドテクロノジーがオンプレミスより優れているのは、魔法を使っているからではありません。MSP Blueshift(メルボルンに拠点を置くマネージドITサービスプロバイダー)のセールスおよびカスタマーケア担当ディレクター、Craig Boyle氏は、 すべてのデータを1か所に集約することで、インサイトを生成しやすくなり、インテリジェントな意思決定が促進されると述べています。
「クラウドインフラストラクチャーを採用すると、1か所にすべての顧客データを効率的に収集して分析できます」と同氏は言います。「これにより、顧客をそのふるまいに基づいてセグメント化できるようになるため、エクスペリエンスやインタラクションをさらに高度にパーソナライズできるようになります」。
Blueshiftは、クラウドインフラストラクチャーへと移行できるようにクライアントを支援するだけでなく、自社でもクラウドを使用して顧客データの格納やサポートチケットの分析を行い、アプリケーションの使用によって繰り返し問題に直面している顧客を特定しています。
「そのような情報を得ることで、アプリケーションの特定の機能の使用方法に関するトレーニングが必要なユーザーについて、クライアントにアドバイスすることができます」とBoyle氏は言います。「そのような情報は問題の根本原因の解明に役立つため、クライアントにとって重要です。また、Blueshiftにとっても、今後のクライアントのカスタマージャーニーを改善するために役立ちます」。
顧客データをクラウドに統合
Aberdeen Strategy & Researchが2021年7月に実施した調査によると、統合された顧客エクスペリエンスを提供している企業はそうでない企業と比較して、顧客満足度が約6倍、顧客維持率が70倍も高くなっています。また、収益が13.6%(他の企業は2.4%)、利益率が10%(他の企業は1.8%)増大しています。
その主な理由は、データを統合するプラットフォームを使用しているからです。そのようなプラットフォームによって、より高価値の顧客を特定してセグメント化し、クロスセルやアップセルに応じる可能性がより高い顧客にフラグを設定できます。これにより、企業はどのメッセージまたは顧客とのタッチポイントが最良の結果を生み出すかを理解し、マーケティングキャンペーンを微調整することができます。Aberdeenによると、顧客データの単一ソースを利用しているマーケティング担当者は、前年比で4.4%も高い投資収益率を達成しているとともに、運用コストを13%近く削減しています。
営業、マーケティング、サポートチーム間で顧客データを共有し、そのデータを分析することで、何百万人もの顧客を抱える企業はよりパーソナライズされたエクスペリエンスを提供できるようになると、CensusのJabes氏は述べています。
「企業は統合された顧客データのすべてを取得することができ、分析チームがそのデータを分析することで、どの顧客がより高価値かを判断できます」と同氏は言います。「そして、その情報をたとえばZendeskなどに投入し、サポートチケット用のさまざまなキューを作成して、最も価値の高い顧客がより優れたエクスペリエンスを得られるようにすることができます」。
クラウドへの移行に乗り出す
クラウドへの移行は慎重に計画する必要があると、Softjournの Mitsiuk氏は言います。プロジェクトをいくつかの小規模な部分に分けて、プロセスの各段階で十分なテストを行えるように計画します。
Jabes氏は、完全に移行する前のまだ途中段階の組織にとって最適な手順は、すべての顧客データをクラウドベースのデータウェアハウスに移行することだと言います。また、オンプレミスのデータセンターをコンテナー化するなど、クラウドネイティブのテクノロジーの採用も移行の簡素化に役立つと、同氏は述べています。
これは、インフラストラクチャーのすべてがクラウドになければならないという意味ではありません。企業は、製品開発を注意深く監視するために、生産システムを社内に保持したいと考える場合もあります。また、機密データや厳格な規制の対象となっているデータをクラウドに移行することに消極的な場合もあります。しかし、バックオフィスのアプリや顧客向けのサービスについては頭を悩ます必要はないとJabes氏は言います。
「顧客データプラットフォーム、エンゲージメントソリューション、CRM、サポートシステム、財務などについては、フリクションに悩まされることのないベストオブブリードを使用するべきです」と同氏。「確実に言えることは、その答えはクラウドだということです」。