手を伸ばせばとどくデータドリブンな組織作り — CIOが活用すべき“クラウドの本当の力”

ほとんどの企業は実のところ、データを有効活用していません。クラウド投資の価値を最大化し、ビジネスの成長を推進するためにITリーダーが導入すべき戦略をご紹介します。

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企業がクラウドに格納するデータの量は、毎年33%増加しています。ところが、その情報の3分の2以上は1度も出番がありません。

この失態はCIOの名声を密かに、しかし致命的に傷つけています。データ戦略を専門とする米国の戦略アドバイザリー企業、NewVantage Partnersがデータエグゼクティブを対象に最近実施した調査によると、「データドリブンな組織を築いた」と回答した対象者はわずか24%でした。また、「ビジネスの転換点となる成果を実現した」と回答した対象者は29%でした。

この事実が意味することは明らかです。CIOは“組織のデータからより多くのバリューを抽出する”取り組みを、戦略的要請と捉えるべきなのです。クラウドベースのデータを完全に活用する組織は、より迅速かつ賢明な意思決定を下し、顧客と社員のエクスペリエンスを高めて、事業が成長する確率が高い、と専門家は指摘します。

OracleやVMwareをはじめ、複数の企業でクラウドアーキテクチャーの責任者を務めたクラウド戦略コンサルタント、サーブジット・ジョハル氏は次のように提唱します。「企業はデータを採掘し、現在の水準よりもはるかに多くのインテリジェンスを活用する能力を身につける必要があります」

この記事のポイント
  • ほとんどの企業で、データの大部分が有効活用されていない
  • バリューを解き放つカギは、クラウドインフラサービス
  • データを統合してオブザーブ可能な状態にし、安全を確保することが、その重要なステップとなる

ジョハル氏や他のITリーダーは「クラウドのパワーを完全に活用することで、最初の一歩を踏み出すことができる」と指摘します。企業はまず、クラウドのインフラサービス(すなわち、データ統合、オブザーバビリティ、検索、セキュリティのサービス)を正しく活用する上でカギとなるいくつかの領域に集中して取り組む必要があります。  

クラウドとオンプレミスの両方でデータ統合をモダナイズする 

企業が着手すべきことの1つがデータ統合、つまりかけ離れたソースのデータを結合する作業です。クラウドとオンプレミスの複数のシステムを寄せ集めて使っている場合、あちこちに散らばっているデータを活用することは不可能です。組織はデータを明確に整理し、一元化しておく必要があります。

IDCでソフトウェア管理およびDevOpsプログラムバイスプレジデントを務めるステファン・エリオット氏は次のように説明します。「今日、データプールが不足することはありません。しかし、データセットを統合して、そこからビジネス上の、あるいは技術的なアドバンテージを抽出しているかと言えば、まったくもって不十分です」

データの統合が完了すると、高度な分析ツールを使って組織の意思決定の質を高めることが可能になります。経営幹部はそうしたツールを手にすることで、より適切な質問を投げかけることができます。スペインのESADEビジネススクールでマーケティング領域を研究する行動科学者、バート・デ・ランゲ准教授は、彼らが経営状況や、顧客エクスペリエンス、戦略的な見通しについて質問することで、「実行可能な行動方針の中から、最適な方針を選ぶ」ことができるようになる、と指摘しています。 

監視からオブザーバビリティに移行する

仮に最良のデータ統合ツールの導入や運用が実現しても、データ量が急激に増大しているのであれば、限られた範囲のデータしか活用できません。 

データから有用なインサイトを生成して管理するには、どのような種類のデータがどこに存在するかを企業がリアルタイムに把握しておく必要があります。

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「今日、データプールが不足することはありません。しかし、データセットを統合して、そこからビジネス上の、あるいは技術的なアドバンテージを抽出しているかと言えば、まったくもって不十分です」

ステファン・エリオット氏IDCソフトウェア管理およびDevOpsプログラムバイスプレジデント

エンタープライズのクラウドシステムにおいて、オブザーバビリティが不可欠な機能となっている理由の1つもここにあります。オブザーバビリティとは、アウトプットをトラッキングすることにより、システムのパフォーマンスを継続的に計測する能力です。

オブザーバビリティは従来型の監視よりもすぐれたパフォーマンスを発揮します。「オブザーバビリティの導入で、SREやDevOps、ITのチームはますます複雑化する動的なインフラとアプリのアーキテクチャーで何が起きているか、なぜ問題が生じたかを把握することが可能になる」と話すのは、Elasticオブザーバビリティプロダクト担当バイスプレジデントのガガン・シングーです。

こうしたデータドリブンなインサイトは、ビジネスで次々にすぐれた成果を上げる手助けとなります。「オブザーバビリティのマインドセットを導入する組織は、アジリティと大規模で質の高い顧客エクスペリエンスを提供する能力において、まったく新たな水準を達成する」と、シングーは断言します。

さらに現在、各種オブザーバビリティツールへのAI機能の導入も進んでいます。最新のAIOpsプラットフォームは、機械学習を活用してデータの収集や分析、活用を実行します。これによりエンタープライズアプリでシステムの問題の原因をすばやく診断し、トラブルシューティングにかかる時間を短縮することができます。

調査会社のガートナーは、「2025年までに半数以上のDevOpsチームがAIOpsでツール群を強化する。2020年時点の15%未満という割合から大きく上昇する」と予想しています。

コグニティブ検索インサイトを重視する

すべてのデータが統合されてオブザーブ可能になっても、所在を問わず重要なデータを見つけることは簡単ではありません。社員による問題解決や改善機会の特定を可能にするには、それでは不十分です。

クラウドシステムと、組織内の多様なデータソースに接続することができ、さらに、機械学習と自然言語理解を適用してデータの見つけやすさを向上する(しばしばコグニティブ検索と呼ばれるアプローチの)、そのような検索テクノロジーが重要となる理由もここにあります。

Oktaの前CIOで現在はビジネスコンサルタント兼著作家として活動するマーク・セトル氏は「コグニティブ検索を活用すると、企業は従来に比べてはるかに多くのデータを分析し、行動を取ることが可能になる」と指摘しています。

データへのゼロトラスト

クラウドインフラサービスは、オンプレミスのシステムにはない複数のセキュリティアドバンテージをもたらします。しかしさらに重要なのは、CIOやCISOが組織のデータを保護する方法を見直し、モダナイズする手段となるという点です。

クラウドを使う場合、時代遅れな境界的防御モデルをゼロトラストアプローチへとリプレースすることが可能です。ゼロトラストアプローチでは、すべてのユーザー、デバイス、データリクエストが検証されるべき潜在的脅威として扱われます。またクラウドベースのセキュリティテクノロジーは、企業とその資産に最も大きな脅威を与える要素を評価することにより、サイバーリスクへのより高度なアプローチを実現します。

テクノロジーインフラをクラウドに移行することで広範なメリットがもたらされる点については、ほぼ議論の余地がありません。しかし、、データ統合とオブザーバビリティ、検索、セキュリティが進歩しなければ、CIOがインサイトをビジネスのパフォーマンス向上に活かすこともできません。

ブラーギンは次のように述べています。「企業各社は、データを大規模に、よりうまく監視、分析、保護するための新たな戦略を検討する必要があります。ITリーダーが組織のインフラ全体をよりよく見渡せるようになり、データとツールのサイロを破壊すれば、データドリブンな組織構築に向かう確かな道が開かれます」

CIOとITリーダーが取るべき次のアクション
  • かけ離れたソースからのデータ統合を最優先で実施し、検索可能で唯一の信頼できる情報源を構築する
  • オブザーバビリティツールを使ってクラウドシステムのパフォーマンスをリアルタイムにトラッキングし、問題を発見する
  • ゼロトラストなどクラウドベースのセキュリティフレームワークを積極的に導入する