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ソフトウェア&テクノロジー

株式会社日立ソリューションズ:
ビジネスデータの発生から管理・
共有・活用までを支援する「活文」

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株式会社日立ソリューションズについて

日立ソリューションズが開発・提供しているビジネスデータの活用を支援する「活文」は、3千社以上の企業に導入され、帳票や文書、図面など、日々の業務で生まれるさまざまなビジネスデータの適切な管理と活用に役立てられている。活文の提供開始は1990年代にさかのぼる。以降、活文は時代の変化に合わせて新技術を取り込み、今も製品機能の拡張を続けている。2018年には、新たに活文に追加された製品「活文 企業内検索基盤」のエンジンにElasticsearchが採用された。そして、クラウド全盛の現在、活文はパブリッククラウド「Microsoft Azure」と組み合わせて導入・活用する企業が増えているという。「活文×Azure」の掛け算によって、企業にはどのような相乗効果が生まれているのだろうか?

「活文」とは?

「活文」は日立ソリューションズの文書管理を中核としたソフトウェアブランドだ。その特徴の1つに“拡張性”があり、企業の会計帳簿書類や発注書などを管理する「電子帳票システム」、文書のバージョン管理やアクセス制御を行う「文書管理システム」など、さまざまな製品を開発してきた。

日立ソリューションズ ビジネスコラボレーション本部フロントソリューション部の土井聡氏は「活文は20 年以上続いているブランドであり、時代の変化やニーズに合わせて製品を追加してきました。提供開始当初は、文書の“管理”だけを求められていましたが、現在はデータの“発生”から“管理”、“共有”、“活用”までを担い、利用フェーズごとの課題を解決するソリューションに発展しています」と話す。

具体的に活文が利用フェーズごとに提供している機能を示すと、次の通りだ。

ビジネスデータの「発生」:データ自動抽出基盤
ビジネスデータの「管理」:文書管理システム、電子帳票システム、ファイルサーバスリム化
ビジネスデータの「共有」:企業間情報共有システム、大容量高速ファイル転送、メールゲートウェイ
ビジネスデータの「活用」:企業内検索基盤、知的情報マイニング

2018年にリリースされた活文の新製品「活文 企業内検索基盤」

この中で、2018 年にリリースされた「活文 企業内検索基盤」のエンジンにはElasticsearchが採用されている。活文 企業内検索基盤は、ファイルサーバーやWebサイト、データベースなどを検索の対象としており、社内に分散する情報の横断的な検索を実現した。さらにAIがキーワード候補を挙げて利用者を補助するシステムにより、ニーズに応じた検索環境を実現し、毎日の情報探索にかかる時間の短縮を可能にする。

「活文企業内検索基盤」が開発されたのも“時代の変化”によるものだ。活文では以前から管理対象である帳票や文書などのデータ検索が可能だったが、社内全体のデータを横断的に検索することはできなかった。「日本の企業はWindowsの共有フォルダにデータを貯めていくケースが多いのですが、これは便利な反面、数が多すぎて必要なデータが見つからないというデメリットがあり、高度な検索エンジンがほしいという声が増えてきました。そのニーズに対して我々は、データを貯めておくだけでは新たなインプットは生まれないので、過去の適切なデータを検索することで次のビジネスに役立ててもらいたいと考えました」(土井氏)。

Elasticsearchを「活文 企業内検索基盤」の開発に採用した理由

「活文 企業内検索基盤」にElasticsearchを採用した理由については、「活文 企業内検索基盤の製品化構想は2016年からスタートしました。良い検索エンジンがあったら開発に使いたいと思っていて、その頃から海外で実績をあげていたElasticsearchに注目していたんです。選定にあたっては、活文が取り扱うデータ件数は1千万件程度ではなく数千万から数億件にのぼるので、“大規模に対応できる”ことが大前提でした。そうやって絞っていくと、実際のところElasticsearch以外に候補はありませんでしたね」と振り返る。

土井氏は活文 企業内検索基盤をわかりやすい例として「社内版Google」とたとえる。その具体的な使い方は、Webブラウザ上の検索窓に検索したいキーワードを入力すると、瞬時に社内データをElasticsearchで検索し、ハイライト表示とともに結果が返ってくる。キーワード候補の表示があり、ファイル種別・日付によるソートも可能だ。

「Elasticsearchは優秀な検索エンジンなので、それを使っている活文は“高速検索”をアピールしています。活文 企業内検索基盤はElasticsearchを日常の業務ですぐに使えるように補っています。例えば、キーワード(単語)ではなく文章で検索する機能です。手持ちのファイルに書かれている本文をコピー&ペーストで入力して検索すると、自動で“できるだけヒット率が高いもの(似ている文書)”を探してくれます。また、数字とアラビア数字や大文字と小文字などの“表記ゆれ”も許容して検索してくれたり、社名などの日本語表記と英語表記を登録しておくと同一のものとして検索してくれたりします」(土井氏)。

Webサイト、データベースなど分散する情報の横断的な検索を実現することで、目的の情報を見つけ出すまでにかかる時間を大幅に短縮できます。

– 株式会社日立ソリューションズ ビジネスコラボレーション本部 フロントソリューション部 土井 聡 氏

加速的に増加する「活文」のニーズ

現在、活文のニーズは加速的に増えてきているという。その背景にあるのは、総務省が2018年9月に掲げたDX(デジタルトランスフォーメーション)レポート「2025年の崖」だ。その内容を要約すると、既存システムが事業部門ごとに構築され全社横断的なデータ活用ができない状態が変わらない場合は2025年から2030年にかけて国内で年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるというもの。この大きな課題に対して、活文は間違いなく解決する打ち手の1つになるだろう。

文書管理システムや検索システムは活文に限らず他社も出しているものの、土井氏は活文ならではの“強み”があると胸を張る。「我々の強みは、日立グループの文書管理製品として20年以上続けている点です。たとえば公文書は30年保存しなければならないというルールがあったりしますが、そもそもの話、文書管理システムを入れて数年後にサービスや運営元の企業がなくなっていたら困りますよね。サービスが続いているというのは非常に大事なことであり、我々、日立グループは100年続いた会社だからこその信頼と実績があります」。

Microsoft Azureとの組み合わせで導入

企業が実際に活文 企業内検索基盤を導入するケースはどのようなものがあるのだろうか。「主に3つのケースがあります。社内のデータ量が増え続けていて適切な管理ができていない状況の改善や、2019年にサービスを終了したGSA(Google Search Appliance)の代替、また、RDBで管理している社内システムの検索高速・高度な検索への対応。この中で最も多いのは1つめのケースです」と土井氏。

具体的な事例として、2019年4月から活文を導入しているケーブルテレビ事業・番組供給事業統括運営会社のジュピターテレコム(J:COM)のケースがある。「J:COM様は申し込み関連書類と工事関連書類を電子化して保存していて、それが2018年時点で8,000万件、10TB以上にもなっていたそうです。さらに、毎日約2万件のデータが追加されていて、ストレージが足りなくなるたびに買い足していたため、コストが大きな問題になっていました。そこでデータが増えても検索性能を維持できて、拡張性をもって継続的に運用できるシステムを検討された結果、弊社の活文を採用いただきました」(土井氏)。

Microsoft Azureを推薦する理由

J:COMは、「活文Contents Lifecycle Manager」と「活文 企業内検索基盤」をMicrosoft Azure上で稼働する方法を選択している。その結果、「以前よりも検索がしやすくなり、検索スピードもアップしたという評価をいただきました。さらに、サーバー環境もオンプレミスからクラウドのAzureに移行したことで、「製品保守期限切れ」で発生していた余分なコストを抑えることができたうえ、永続的に使うことができるという経営面でのメリットも感じられているそうです。クラウドを利用することでお客様はサーバーの資産をもつ必要がなくなり、Azureは運用管理もやってくれるのでアプリケーションの管理に専念できるというメリットもあります」(土井氏)。

活文はMicrosoft Azure以外のパブリッククラウドでも稼働が可能だが、土井氏はMicrosoft Azureを推薦する。「活文は扱う文書がWord、Excel、PowerPointと、Microsoft Officeの文書であることが多く、活文が稼働するサーバーの前提OSもWindowsであることが多いです。Microsoftは企業文書のアプリケーションを長年提供し続けてきて、信頼性も高いため、活文とAzureは相性がよいのです」。

Fortune Global 500企業のうち95%以上が利用するMicrosoft Azure

今年、サービス開始10周年を迎えたMicrosoft Azureは、今や58リージョン、140ヵ国で利用可能な世界最大規模のマイクロソフトが提供するパブリッククラウドだ。仮想サーバーやストレージなどの「IaaS」のサービスに加え、様々な言語で書かれたアプリケーションを開発・デプロイするサービスや各種データベース群、アナリティクス基盤などを「PaaS」でも展開している。現在は世界シェア2位に位置し、アメリカの経済誌「Fortune」が毎年発表している「Fortune Global 500」のうち、95%以上の企業が何らかの形でAzureを利用するほどグローバル規模でサービスが浸透している。

日本マイクロソフト Azureビジネス本部 デベロッパーマーケティング部 部長の坂田州氏は、他社のパブリッククラウドとの比較について次のように分析する。「お客様やパートナー様がAzureを選択する理由は複数あります。AzureはもともとPaaSのクラウドサービスとして誕生しただけあって、PaaSにはさまざまな機能が先行して用意されており、人件費含む運用にかかるコストを最小限に抑えることが容易な他、痒い所に手が届く開発ツール群との併用で高い開発生産性を実現できます。次に、各国のセキュリティ・コンプライアンスで定められているルールに準拠しており、エンタープライズ水準の信頼性があること。加えて最後に、決して弊社自身で開発しているサービスだけでなく、OSS含む他社技術との連携・併用を前提としている最もOpenなクラウドであるということです」

Microsoft Azureユーザーは利用用途・要件に合わせて最適な形でElastic社のソリューションを、クラウド上で、場合によってはオンプレミス環境合わせたハイブリッド環境で利用できます。

– 日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーマーケティング部 部長 坂田 州氏

ElasticとMicrosoftのパートナーシップにより「Elasticsearch Service on Azure」をリリース

3つめの「他社技術との連携・併用」に関しては、2014年にサティア・ナデラ氏がCEOに就任したことをきっかけに同社が大きく事業戦略の舵を切ったことが大きく影響している。「以前の弊社は外部企業とのパートナー関係がほぼありませんでしたが、サティアは“会社としてオープンにならないといけない”とメッセージを打ち出し、以降様々なパートナー様との連携・協業を強めてきました」(坂田氏)。

ElasticとMicrosoftの協業関係もこの流れの中から生まれたものであり、昨年9月には「Elasticsearch Service on Azure」という新サービスのリリースを共同発表した。これによりAzureを利用するお客様・パートナー様はElasticsearchをフルマネージドで利用できるようになり、日本国内でも東日本リージョンにて2020年2月中旬からサービスの開始を発表した。

「このように連携を進めていく中で、共同でマネージドサービス開発しているが、勿論、従来の仮想マシン上にElasticsearchをデプロイし利用することもできる。Azureを利用するお客様・パートナー様はベンダーロックインに悩むことなく、複数選択肢から自社の用途に最適な形を採用することができるようになります。弊社はAzureの製品として検索サービスを提供していますが、これはあくまでAzure上でしか稼働できず、オンプレミス環境では使えません。でも、昨今企業が全てのIT資産をクラウドに移行しているか、そもそもするべきか、と言えばそうではなく、実態は“既存のオンプレミス資産とパブリッククラウドを最適な形で併用したい”というニーズがあります。その点でも、Elastic社との協業の形は、お客様・パートナー様の選択肢が広げることができていると思います」(坂田氏)。

Azureのサービスと組み合わせてクラウド環境の監視

Azureのサービスと組み合わせてクラウド環境の監視

「活文」もまさにこの文脈から生まれた1つの事例だ。「弊社にとってパートナー様との連携・ソリューション開発が我々の戦略の中でも非常に重要であり、それは特にエンタープライズ領域ではなくてはならない存在です」と話す坂田氏。今後、Elasticの製品が活用されるシーンはますます広がっていく。