エンタープライズサーチとは?
エンタープライズサーチの定義
エンタープライズサーチ(社内検索用ソフトウェア)は、企業組織内のデータや情報を検索するためのソリューションです。コンテンツには、構造化データと非構造化データ(製品画像や社内データメトリックなど)のどちらも含まれます。エンタープライズサーチソフトウェアは、Web、eコマース、ナレッジベース、カスタマーサービス用アプリなどの検索アプリに使用されています。
エンタープライズサーチを使用すると、サイト上のコンテンツの検索にかかる時間を減らし、生産性と効率性を高められます。Webサイトのコンテンツを閲覧するための検索バーなど、顧客向けに使用できます。また、社内向けとして、ビジネスの情報やドキュメントのほか、テックスタック、データ、ログの要点にアクセスするために使用することもできます。
エンタープライズサーチの仕組み
エンタープライズサーチの基本機能は、データのインデックス化、クエリ、許可されたユーザーへの表示です。動作は他の検索エンジンと似ていますが、コンテンツは特定の企業に関連するもの(一般的には社内コンテンツ)に限られます。
エンタープライズサーチエンジンは、多くの場合、Webクローラーと活用し次の3段階で動作します。
- 探索:この段階は収集段階とも呼ばれ、エンタープライズサーチエンジンがWebクローラーをデプロイし、サイトやディレクトリデータでデータを探索("クローリング")します。その後、エンタープライズWebクローラーがインデックス化用のデータを抽出します。
- インデックス化:エンタープライズWebクローラーにより抽出されたデータはソートされ、インデックスまたはリレーショナルデータベースに格納されます。これにより、データをクエリで見つけやすくなります。検索エンジンによっては、このインデックス化段階で、メタデータの抽出や自動要約などの他のプロセスも実行します。こうしたプロセスでも、情報の見つけやすさが高まります。インデックス化は、APIまたはコネクター(完全マネージドのネイティブと、カスタマイズ可能なフレームワークを利用するセルフマネージド)を使用しても行えます。これらは、データソースのデータをデプロイと同期します。
- クエリ処理:データのインデックス化が完了すると、エンドユーザーが照会可能になります。企業の従業員であれば、情報、ファイル、ドキュメントを検索し、許可または権限に基づいた回答を得られます。顧客であれば、製品やビジネス情報を照会したり、よくある質問について検索したりできます。検索エンジンは、クエリに回答するため、インデックスを調べて一致するものを探します。
ただし、Webクローラーが最も簡単な方法であるとは言え、すべての検索でこれを使用する必要があるわけではありません。さまざまな層でのカスタマイズで、これらの段階を補完できます。Elasticsearchなどのソリューションでは、インジェストパイプラインを使用して、まだインデックス化されていないデータさえも変換し、一貫性を確保できます。一部のエンタープライズサーチソリューションでは、自然言語処理(NLP)および機械学習(ML)を使用して、クエリに対して関連性の高い結果を特定し、提示できます。
エンタープライズサーチの種類
エンタープライズサーチにはさまざまな種類がありますが、その違いは検索のクエリ処理段階にあります。
サイロ型:サイロ型検索では、各検索をリポジトリごとに実行して、データソースごとに結果を返します。
串刺し:串刺し検索では、各検索を一度に複数のデータベースに送信して実行します。結果は、データソースごとに返されます。
一元型型:一元型検索では、単一の検索を指定のインデックスで実行します。複数のデータソース、プラットフォーム、アプリケーションの全体を検索し、検索結果をまとめて返します。
AI検索:AI検索では、一元化したインデックスに機械学習を適用して、結果の関連性を高めます。
エンタープライズサーチの主な機能
エンタープライズサーチのテクノロジーはベンダーごとに異なりますが、主要な機能はいずれも同じです。
コネクター
エンタープライズサーチエンジンでデータをインデックス化するには、データコネクターが必要なことがあります。コネクターとは、各種のプロトコルを使用してさまざまなタッチポイントとの接続をコード不要で作成できるコンポーネントです。つまり、コネクターを使用すると、元のソースのデータをインデックスと同期できます。エンタープライズサーチを動作させるうえではデータインジェストが不可欠ですが、データコネクターはこのデータインジェストに重要なコンポーネントです。
データセキュリティ
エンタープライズサーチでは、データのプライバシーとセキュリティが不可欠です。プラットフォームによっては、包括的なサービスの一環としてセキュリティ機能が提供されます。また、セキュリティを別に検討しなければならないプラットフォームもあります。
ソフトウェアは、企業のセキュリティポリシーや国の規制を遵守するように構成可能なものでなければなりません。また、社内検索プラットフォームでは、適切な権限を持つユーザーのみがアクセス可能なように制御する必要もあります。これは、重要なビジネス情報を保護するためです。
エンタープライズの他のコンポーネントとしては、以下のものがあります。
- 分析とインサイト:パフォーマンスを監視し、問題や傾向を特定しパターンを追跡する機能であり、検索の運用担当チームが検索エクスペリエンスを高めるうえで役立ちます。
- 機械学習:検索プラットフォームにMLを組み込み、生成AI、ベクトルデータベース, セマンティック検索などを利用できます。機械学習機能には、検索の関連性とパフォーマンスを高める効果もあります。また、透明性を確保するための機能や、検索履歴やユーザーの行動に基づいて関連性の高い結果を自動的に、またはチームの許可後に提案する自動化機能が備わっている場合もあります。
- デプロイの柔軟性:多くの企業はマルチクラウド環境を展開しているので、社内検索ソフトウェアをそのエコシステム全体にデプロイしなければなりません。柔軟な検索プラットフォームであれば、稼働環境をオンプレミス、マルチクラウド、ハイブリッドから選べる柔軟性を備えています。
- 検索UI:エンタープライズサーチエンジンを使用すれば、既存の検索機能を素早くカスタマイズできます。一般的な社内検索エンジンには、ユーザー向けの検索バーが用意されています。検索バーによっては、自動提案や自然言語検索を利用して、ユーザーが検索を直感的に行えるよう構成できます。
エンタープライズサーチツールを導入するメリット
エンタープライズサーチを導入する主な要因は、効率性と生産性です。社内的には、エンタープライズサーチを導入することで、従業員が作業に必要となる関連情報を見つけるのにかかる時間を短縮し、生産性を高められます。
また、社外的に見ると、エンタープライズサーチには収益性を高める効果があります。顧客向けのエンタープライズサーチがあると、サイトを閲覧した人が購入に至る可能性が高くなります。エンタープライズサーチは、よくある質問にアクセスしやすくしたり、関連性の高い製品情報を提供または提案したりすることでサイト上での顧客の体験を高められるので、顧客満足度やブランドロイヤルティに重要な要素となります。
エンタープライズサーチのユースケース
エンタープライズサーチは、以下のようにさまざまなビジネスに利用できます。
- eコマース:顧客が検索バーで商品を検索できるようになります。クエリと検索エンジンによっては、完全一致や関連性の高い一致を得られます。また、検索を利用することで顧客に合わせた商品の提案を行い、商品を見つけてもらいやすくすることもできます。
- カスタマーサポート:企業はエンタープライズサーチを導入することで、顧客にセルフサービス形式のサポートナレッジベースを提供できます。強力な検索ツールを用意すれば、顧客は疑問の答えを得て、問題を素早く解決できるようになります。また、サポート担当者は、社内のサポートナレッジベースや顧客とチケットに関する技術情報にアクセスして、顧客の問題解決にかかる時間を短縮するとともに、サポートコストも削減できます。
- ワークプレイス検索:エンタープライズサーチは、組織を問わず社内用の検索ツールにもなります。社内で使用するあらゆるデータソースや生産性向上ツールをつなげる検索ツールがあれば、従業員が必要な情報やファイルを検索しアクセスするのにかかる時間を短縮して、チームの生産性を高められます。
- Webサイト:企業のWebサイトに検索バーを導入すれば、Webサイトを利用および閲覧しやすくできます。潜在顧客やWebサイトの訪問者が目的のコンテンツを見つけやすくなります。これにより、顧客エンゲージメントを強化し、顧客維持力とブランドロイヤルティを高められます。
今後のエンタープライズサーチの動向
ユーザーエクスペリエンスの強化が求められているため、エンタープライズサーチの将来性は伸び続けています。検索機能を改善すれば、関連性を高めより適切な結果が得られるようになり、ユーザーエンゲージメントを向上できます。大規模言語モデル(LLM)や生成AIの登場により、検索をプログラミングして、ユーザーの意図を予測および理解し、クエリに対して非常に具体的な応答を返せるようになっています。また、ChatGPTなどの最新テクノロジーを組み込みたいという要望から、拡張性の高いツールキットが求められています。
ベクトルデータベースも、エンタープライズサーチの将来の一端を担っています。エンタープライズサーチにベクトルデータベースを組み込むと、キーワードやシノニムの制限をなくしてより複雑にデータの取得を行い、マルチモーダル検索を実現できます。
Elasticsearchでのエンタープライズサーチ
Elasticでは、エンタープライズサーチに対応したElasticsearchを提供しています。この製品は、セットアップが簡単で柔軟性に優れた検索プラットフォームであり、ビジネスの要件に適合した検索エクスペリエンスを構築して、自由な場所にデプロイできます。
Elasticを利用すると、AIを搭載し使いやすい顧客向けの検索エクスペリエンスを構築できます。さらに、Elasticでは社内検索に適したWorkplace Searchも提供しており、この製品では知識の共有とコンテンツ取得を通じて生産性と効率性を高められます。
エンタープライズサーチのリソース
- Elasticsearch Serviceのビジネスバリューを推計
- 検索で企業サイトのエンゲージメントを高める方法を見る
- Webサイトエクスペリエンスの向上に役立つeブックを読む
- 記事で紹介したツールで検索結果の関連性を高める方法を知る
- 検索アプリケーションの開発をすぐに始める方法を見る
エンタープライズサーチに関するよくある質問
エンタープライズサーチとElasticsearchの違いは何ですか?
エンタープライズサーチは、企業組織内のデータや情報の検索を指す一般的な言葉です。Elasticsearchは、Elasticの検索プラットフォームテクノロジーです。
エンタープライズサーチとサイト内検索の違いは何ですか?
エンタープライズサーチでは、従業員が社内ドキュメントやデータベース、ディレクトリサービスなど、社内向けの情報にアクセスできます。また、顧客向けのWebサイト内検索ツールであるサイト内検索も含む場合があります。サイト内検索は、企業のWebサイトで動作し、顧客にサポートへのアクセス機能、製品やサービスの閲覧機能を提供します。
エンタープライズサーチを最適化するにはどうすればよいですか?
エンタープライズサーチを最適化する方法はさまざまであり、手動で行う場合はAPIや組み込みのツール、人工知能、機械学習機能を使用します。AIツールの自動化機能を活用すれば、結果の関連性を細かく調整したり、検索に大規模言語モデル(LLM)を組み込んだりすることもできます。