非構造化データとは?
非構造化データの定義
非構造化データとは、設計されたモデルや構造で整理されていないデータを指します。非構造化データは、一般的に定性データに分類され、人間または機械によって生成されることがあります。非構造化データは、利用可能な最も豊富なタイプのデータです。他の多くのユースケースの中でも、分析してビジネス上の意思決定を導き、ビジネス目標を達成するために使用できます。
通常、非構造化データはネイティブ形式で保存されます。これは、このデータをアクショナブルなインサイトに変換するという課題の一因となっています。非構造化データは構造化データよりも扱いが難しいものの、多くの場合、構造化データにはない豊富で詳細な情報が含まれています。その結果、多くの組織が、非構造化データをより適切に分析し、そこからインサイトを得るために、機械学習(ML)や自然言語処理(NLP)などのテクノロジーに投資しています。
非構造化データの例
非構造化データは定性データで、テキスト、画像、音声、動画などの形式で存在します。非構造化データのさまざまな例は次のとおりです。
- 音声や動画データ、監視データ、地理空間データ、画像、気象データなどのリッチメディア。
- デバイスからのテロップやセンサーデータなどのモノのインターネット(IoT)データ。
- 電子メール、テキストメッセージ、請求書、記録、生産性アプリケーションの通信データなどのテキストデータ。
- 機械が生成した宇宙探査や地震レポートなどの科学データ。
- MRI、X線、CTスキャンなどの医療データや画像、医師の診断書や処方箋などの医療データ。
新しいデータ収集技術が開発されるにつれ、当然、これら以外にも非構造化データの例が出てくるでしょう。
構造化データと非構造化データ
構造化データは、非構造化データとは異なり、あらかじめ定義された構造またはモデルの中に存在する定量データです。このデータは高度に整理されているため、企業や機械学習アルゴリズムによって容易に処理されます。
構造化データとは、スプレッドシートやSQL、MySQL、PostgreSQLのようなリレーショナルデータベースにしっかりと格納されるデータのタイプだと考えてください。構造化データは、ログ、メトリック、日付、名前、郵便番号、クレジットカード番号など、解釈しやすい情報を企業に提供するため、顧客関係を管理するために使用されます。
対照的に、非構造化データは定性データであり、一貫した内部構造がありません。その結果、非構造化データは、適切なツールと専門知識がなければ解釈することが困難です。
構造化データは、名前、購入履歴、地理的な位置など、顧客の行動の概要を企業に提供することができます。非構造化データは、製品レビュー、サポートチケット、Webサイトのナビゲーションパターンなど、顧客の意図や行動、つまりなぜとどのようにをより深く理解するのに適しています。
非構造化データの課題
非構造化データの量、多様性、品質のばらつきは、データを処理、管理、分析しようとする組織にとって共通の課題です。
- データ量:非構造化データは豊富なデータです。既存のデータの80%1を占め、常に生成されています。調査会社ITCは、データ量は2018年から2025年にかけて430%増加2すると予想しています。
- データの多様性:非構造化データは、テキストデータ、画像、動画など、多種多様なタイプのデータで構成されています。非構造化データを一元的に保存するために、データレイクのような大規模なデータリポジトリが必要です。非構造化データに固有の多様性により、画像、動画、テキストをどのように相互参照するかというリンクの課題もあります。
- データの質:非構造化データの質は、その種類の多さもあり、一貫していません。非構造化データには、エラーや矛盾、無関係な情報が含まれている可能性があり、正確な情報を得ることが困難になる場合があります。非構造化データの前処理やクリーニングは、時間を要する複雑な作業です。
- 分析:すばやく照会、分析できる構造化データとは異なり、非構造化データはテキストが多く、ほとんどの場合、データベースにきちんと適合しません。非構造化データはそのままの形式で保存され、閲覧時にのみ処理されます。
- セキュリティとプライバシー:非構造化データには機密情報が含まれている可能性があります。このデータのセキュリティを確保し、プライバシーを維持することは困難です。
- 統合:非構造化データを構造化データと統合して全体像を把握することは、事前に定義されたデータモデルがないために複雑化する場合があります。
したがって、非構造化データの管理と分析の課題は、主にデータ量に起因します。電子メールなどの数ギガバイト(GB)から、完全なメディアファイルなどの数ペタバイト(PB)に及ぶアイテム、オブジェクト、ファイルに遭遇する可能性があります。そのため、手作業で管理することは可能ですが、多くのデータベースやツールでは、このような大量かつ多様な非構造化データを扱うことはできません。急激に増加するデータを保存し、処理するためには、特定のツールと技術が必要です。
非構造化データの応用
非構造化データを分析すれば、ビジネスにさまざまな機会がもたらされます。非構造化データは定性データとして、企業が顧客、顧客の意向、市場の変化をより深く理解するのに役立ちます。これにより、セキュリティが強化され、障害回復力が高い優れた顧客エクスペリエンスを提供できるようになります。
非構造化データの用途には、以下のようなものがあります。
- 顧客エクスペリエンスの向上:カスタマーサポートのチャット、電子メール、通話記録を分析することで、一般的な顧客の問題を特定し、サポートプロトコルを改善し、顧客の検索エクスペリエンスをパーソナライズして、カスタマーサービス担当者をより効果的にトレーニングすることができます。
- 患者の医療結果の予測:患者の医療記録には、医師のメモのような非構造化データが含まれていることが多く、それらを分析することで、パターンを特定したり、患者の結果を予測したり、治療計画に役立てたりすることができます。
- 不正の検出:金融サービスでは、非構造化データを不正行為の検出に利用することができます。たとえば、電子メール通信を分析すると、不正行為を示す疑わしいパターンが見つかるかもしれません。
- 推奨の提案:eコマースプラットフォームやストリーミングサービスは、商品説明や映画の台本などの非構造化データを分析して、推奨アルゴリズムを改善できます。
- 自然言語処理(NLP)モデルの学習:非構造化データは、自然言語処理におけるAIモデルの学習においてきわめて重要です。たとえば、チャットボットは、本質的に構造化されていないテキストデータの大規模なコーパスから学習します。
- 画像認識のためのAIの学習:画像という形式の非構造化データは、顔認識や物体検出などのタスクのための機械学習モデルを学習する際の基礎となります。
- 予測データ分析の提供:非構造化データを分析することで、市場トレンドを予測し、それに応じて調整できます。
- センチメント分析の実施:非構造化データをマイニングすることで、顧客の感情、行動、購買パターンに関するインサイトを得ることができます。また、ソーシャルメディアへの投稿、製品レビュー、顧客からのフィードバックなどのデータを分析し、自社の製品、サービス、ブランド全体に対する顧客の感情を理解できます。
このような非構造化データの活用は、企業にとって多数の利点をもたらします。
セキュリティリスクの軽減
テレメトリデータの分析は、貴重なインサイトを導き出し、現実世界のサイバーセキュリティ脅威の現象やトレンドをユーザーに伝えることができます。セキュリティチームは、最新のセキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)ツールを使用することで、非構造化データを含むあらゆる種類の膨大な量のデータを大規模に検索し、監視とコンプライアンス、脅威の検出、防御、ハンティング、インシデントレスポンスを支援することができます。
運用のレジリエンスの改善
アプリケーションの可用性とパフォーマンスを最適化する必要性に伴い、システムから生成され続けている非構造化データを監視する能力が必要です。ログとメトリックは、ユーザーの需要が能力を上回っていることや、サーバーエラーがパフォーマンスに影響していることをリアルタイムで示すことができます。根本原因が分かれば、対処することができます。
顧客エクスペリエンスの向上
企業は非構造化データを管理することで、顧客により良い検索エクスペリエンスを提供し、より優れたユーザーエクスペリエンスを提供できます。リッチ検索の追加により、顧客と開発者のフロントエンドとバックエンドの検索エクスペリエンスが改善されます。顧客は子供のために縞模様の黄色いおもちゃを簡単に見つけることができます。また、従業員はどのような環境にあっても、必要なファイル、画像、動画クリップを簡単に見つけることができます。
非構造化データを管理して分析する方法
本来、非構造化データには、管理や分析を容易に行えるような、あらかじめ定義された構造がありません。つまり、非構造化データを分析するには、まず構造を定義して管理する必要があります。これにより、非構造化データを保存、整理、保護することができます。
整理された非構造化データは、処理と分析の準備が整っています。これらの分析により、アクショナブルなインサイトがもたらされます。
非構造化データの管理と分析を可能にするさまざまなツールやテクノロジーが提供されています。
自然言語処理(NLP):NLPは、自然言語によるコンピューターと人間の相互作用に重点を置いたテクノロジーです。NLPの目標は、人間の言葉を読み解き、理解し、価値あるものにすることです。
機械学習(ML):機械学習は、人工知能(AI)のサブセットであり、コンピューターが学習し、データに基づいた意思決定を行い、明示的にプログラミングされなくても、時間の経過とともにパフォーマンスを改善できるようにします。統計的手法を使用して、構造化データおよび非構造化データのパターンを識別し、予測や意思決定を行います。
データレイク:非構造化データはその多様性と量から、データレイクやデータが作成された場所(「エッジ」)に保存できます。データレイクは、さまざまな種類の大量のデータに適しています。データレイクはネイティブ形式のデータに対応するため、動画、音声、テキスト、ドキュメントをすべて一緒に保存できます。
コンテンツ管理システム(CMS):アプリケーションとしてのCMSは、非構造化データを保存、検索、インデックスし、Webで公開することを可能にします。
組織が非構造化データを活用する方法
さまざまな業界の組織が、非構造化データをさまざまな方法で活用しています。医療から製造に至るまで、非構造化データによって、インサイトに基づく高品質のサービスを提供できます。
医療
医療業界は、さまざまな層で非構造化データの利点を得ることができます。高度なチャットボットにより、医療専門家は、特定の病気を示す発話パターンを理解できるようになります。健康記録アプリは、データが処理されると、健康リスクを特定するのに役立ちます。非構造化データと構造化データを統合することで、医療専門家は患者の治療成果を導き出すことができます。
金融サービス
予測データ分析は、金融の世界において、市場のトレンドと転換を追跡するためにきわめて重要です。このインテリジェンスがあれば、組織はそれに応じて調整することができます。細かいレベルでは、非構造化データはローン、住宅ローン、事業計画書、契約書などの文書作成に使われます。非構造化データ分析は金融犯罪に対する戦いも支援します。不正な署名を識別したり、フィッシング詐欺を特定して対応したりできます。
公的セクター
公的セクターにとってデータは戦略的資産です。サイバーセキュリティ、ロギング、AIOpsを統合した総体的なデータ戦略によって、コストを削減し、運用を簡素化し、ツールやデータの乱立を減らすという価値を最大化することができます。
通信企業
通信企業は、サイロを解消してtelco-as-a-serviceを提供し、ネットワークの可用性を改善することで、データからより多くの知見を引き出すことができます。非構造化データを活用することで、より迅速なデータ分析とプロセスの自動化を実現し、より良い顧客エクスペリエンスを実現できます。
マーケティング
データマイニングと予測データ分析は、市場機会とトレンド、顧客ニーズ、顧客の行動と意図を特定し、理解するために使用される一般的なマーケティング手法です。マーケティング担当者は、顧客とのコミュニケーションを改善し、最終的に顧客エクスペリエンスを改善するために、非構造化データを生成し、利用しています。
製造
計画書、モデル、設計図などの非構造化データは、製造業の実践に必要な要素です。農業における非構造化データを管理、分析する能力は、収量の予測と管理に役立ちます。自動車業界は、需要を把握し、それに対応するために非構造化データに頼っています。
非構造化データを管理、分析するテクノロジーが進化すれば、組織が非構造化データを活用する能力も進化します。
非構造化データの将来のトレンド
近年の人工知能(AI)と機械学習(ML)の発展は、非構造化データの活用に新たな時代の到来を告げています。AIや機械学習テクノロジーが発展するにつれて、非構造化データを処理し、構造化データと非構造化データを統合して、高品質のビジネスインサイトを得る能力も向上しています。
データを取り込む新しい方法が開発されるにつれ、非構造化データの用途は広がり続けています。顔認識は、ほとんどのスマートフォンユーザーにとってすでに当たり前の技術になっています。顔認識テクノロジーの発展により、現在では感情認識も可能になり、医療やカスタマーサービスで重要な役割を果たすことができます。
バーチャルパーソナルアシスタント技術が容易に利用できるようになれば、非構造化データも生産性の向上に役立つでしょう。特定のタスクは自動化されているため、ユーザーは効率とアウトプットを改善できます。バーチャルパーソナルアシスタントを使えば、医師は患者と接する時間を増やし、事務処理に費やす時間を減らすことができます。
Elasticで非構造化データを管理して分析
非構造化データを取り込むと、それを利用できるように加工し、構造を適用できます。Elasticは多数の非構造化データ管理ソリューションを提供しています。
Elasticseach Relevance Engine for AIは、非構造化データを活用するAI搭載検索アプリケーションを構築するための強力なツールセットを提供します。
検索、オブザーバビリティ、セキュリティなどのユースケースで、非構造化データを保存、検索、分析するには、Elasticsearchをご覧ください。
脚注
1 "The Future of Data Revolution will be Unstructured Data" by Priya Dialani, Analytics Insight, October 2020, https://www.analyticsinsight.net/the-future-of-data-revolution-will-be-unstructured-data/ (Accessed June 1, 2023)
2 "Possibilities and limitations, of unstructured data" by Robert Heeg, ESOMAR Global Market Research 2022 (accessed via Research World)