機械学習とAI:その違いを理解する
AIは長い間、ほぼSF作家のおもちゃにすぎない存在でした。人類がテクノロジーを進歩させすぎたばかりに、AIが生命体のように振る舞うようになり、大混乱を巻き起こす。まるでハリウッド映画ですが、AIといえばそんなイメージでした。ところが近年、AIと機械学習のテクノロジーが爆発的に進歩した結果、現在は多くの人が創作、計画、アイデア出しなどにAIを大いに活用するに至っています。
AIと機械学習は現在、医療からエンターテイメントまで、ありとあらゆる分野で大きな変化を起こすことを期待され、導入が進められています。しかし、(新しいテクノロジーにはつきものですが)まだまだ理解が追いついていない人が多いのも事実です。この混乱の大きな一因は、AIと機械学習の2つに共通点やよく似た点が存在することです。そこで、この記事では、それぞれの特徴を紹介したうえで、両者がどのように交わった結果としてこれまでの革新的ソリューションが生まれてきたかを見ていきます。また、AIと機械学習に関して多くの方が疑問に感じている点についても答えを示します。具体的には、以下のような点を取り上げます。
機械学習(ML)の定義と概念
人工知能(AI)とは
両者の主な違い
両者の共通点
現実世界での応用例とそのメリット
機械学習(ML)の定義と概念
機械学習というと最近生まれた概念のように感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この言葉は、70年以上前にコンピューター科学者Arthur Samuel氏によって作られたものです。同氏が採用した定義は、「コンピューターに明示的にプログラムすることなく学習する能力を与える研究分野」です。今なお適切かつ正確な定義ではないでしょうか。
もっと最近になると、高度なアルゴリズムを使って大量のデータを処理し、人間が物事を学ぶときのあり方を模倣する類のAIを称して機械学習という言葉が使われるようになりました。これはつまり、処理する情報が増えるほど精度を増し、問題解決能力が向上するということです。機械学習は、データを分析し、関係性とパターンを割り出すことにより、その精度を高めていくのです。なお、機械学習には、教師あり機械学習、教師なし機械学習、半教師あり学習、強化学習の4種類があるとされています。
機械学習が便利なのは、解決したい問題に応じたアルゴリズムを準備することなく、短時間で学習を進め、複雑な活動ができるという点にあります。そのため、トレンドの予測、複雑なタスクの短時間での自動化、データのパターンや異常の特定に非常に有用です。
機械学習と、機械学習で具体的にできることに関するさらに詳しい概要は、「機械学習とは?」をご覧ください。
人工知能(AI)とは
人工知能は、機械学習とは異なり、1つの具体的なテクノロジーではありません。各種のタスクを処理し、通常は人間の知能が必要な問題を解決することを目的とした手法を幅広く取り扱う領域を指す言葉です。そのため、機械学習のほか、深層学習、自然言語処理、コンピュータービジョンなども、人工知能に含まれます。
AIの用途は無限に考えられますが、よくあるものとしては、問題解決、学習、知覚、コミュニケーション、意思決定、創作などが挙げられます。現在最も人気があるAIは、生成AIです。生成AIは、文章によるコンテンツから音楽、コンピューターのコード、アートまで、さまざまなものを作り出すことができます。ChatGPT、DALL·E、Midjourneyなどの生成AIアプリはいずれも、その出力の質の高さから一躍人気を集めました。
しかし、生成AIを巡っては、盗用の懸念やハルシネーションの問題をはじめ、さまざまな議論が巻き起こっています。これは、生成AIに「オリジナルの」コンテンツの生成方法を教え込む際に既存のコンテンツが使われていることによります。AIの分野は今後も拡大を続けていくと思われます。しかし、倫理的観点から疑問の声が上がる傾向も続くでしょう。あらゆる人の安全を確保する道筋をどのように定め、実践していくかが、今後の課題です。
機械学習とAIの主な違い
機械学習とAIは同じ意味で使われることも少なくありませんが、本来は別個の概念です。既に書いたとおり、機械学習はAIの一種です。AIがすべて機械学習であったり、機械学習を使っていたりするわけではありません。共通点も多い(詳細は後ほど)とはいえ、両者は多くの場合、機能、目的、取り扱う領域のいずれも異なります。
AIの大きな目的は、人間の知能を模倣して各種のタスクを実行できるアプリケーションや機械を作り出すことにあります。そして、そのAIの目的を達成するための取り組みの一環として、各種のアルゴリズムを使って既存のデータから学習するのが、機械学習の主な目的です。
AIは、車の自動運転から医師の診断、文章の創作まで、さまざまな業界の多種多様な問題を解決できます。解決する問題は似ていることもありますが、大抵はそれぞれ大きく異なります。
これに対して、機械学習は、機能が大きく限定されています。機械学習のアルゴリズムが得意とするのは、データを分析してパターンを割り出し、予測を立てることです。逆に、それ以上の問題解決には対応できませんし、AIのようにさまざまな領域に順応させることもできません。
両者の違いを見ていくうえで最も良い方法は、機械学習をAIという大きな機械の(重要な)歯車の1つであると考えることです。ここでイメージする機械は自転車でも、宇宙ロケットでもかまいません。歯車はそれほど大きな動きをするものではありませんが、大切な要素の1つであって、けっして無視したり、軽視したりはできません。
機械学習とAIの共通点
「共通点」とは書いたものの、機械学習とAIに関する話をするにあたっては、やや誤解を招く表現です。両者に共通点があるというよりは、AIの応用に際して欠かすことができない大きな部分を担っているのが機械学習であるからです。ちょうど、皆様が人間として何かを学ぶ能力を考えたときに、そこから知能を切り離せないのと同じようなものです。
この点を理解するうえでは、機械学習がAIを主にどのような点で支えているかを見てみるのが一番です。以下に具体例をいくつか紹介しましょう。
学習機能
AIの第一の目的は、推論、意思決定、状況への順応など、人間の知能や人間が持っている能力を再現することです。そのために使われる手法にはさまざまなものがありますが、なかでも最も重要なのは、ほぼ必ずと言っていいほど機械学習です。なぜなら、AIが情報を分析してパターンを割り出し、自らの動作を調整できるのは、機械学習のアルゴリズムのおかげだからです。
意思決定と予測
同じように、ほぼあらゆるAIツールで重要な位置を占めるのが、意思決定と予測です。情報を評価し、選択肢を比較衡量したうえで次の最善手を決めることは、どんな知能であっても不可欠だからです。機械学習は、AIツールがデータに基づいて意思決定を下すことに関わっています。機械学習のアルゴリズムが大量のデータを分析して割り出すパターンは、AIが意思決定をするうえで大きな役割を担っています。
その他、幅広い応用
既に書いたように、機械学習が取り扱う領域はAIよりも限定的です。それでも、各種のAIツールがさまざまな分野の幅広い問題を解決し、対応できるのは、機械学習のおかげにほかなりません。AIがこれほどまでに多種多様な用途に応用できるようになった背景には、機械学習の存在があるのです。
AIと機械学習の現実世界での応用例とメリット
機械学習を活用したAIは、さまざまな分野の問題をいくらでも解決できる可能性を秘めています。しかし、現実にはどうでしょうか。ここでは、AIがタスクを自動化している事例や、AIのおかげで問題の複雑さが軽減された事例をいくつかご紹介します。
生成AI:創造性は、もはや人間の専売特許ではありません。AIと機械学習により、今や機械であっても美しいアートを作ったり、作曲をしたり、詞を書いたりできるようになっています。また、コードやドキュメントを書いたり、臨時トレーニングの資料を作ったりもできます。
プロセスの自動化:AIは、何度も繰り返す退屈なプロセスを自動化してくれるだけではありません。機械学習を利用できるため、学習を通じてプロセスを改善したり、最適化したりすることもできます。そのため、カスタマーサービスのやり取りの合理化から、複雑な財務データの分析まで、幅広い場面で役立ちます。
データ主導のインサイト:意思決定は、仕事でも生活でも重要な位置を占めています。しかし、最善の決断を下すうえで必要なデータをすべて取り入れるのは、時として人間には不可能です。その点、AIなら大量のデータであっても短時間で分析できるので、関連するデータに基づいて最善の決断を下すことができます。
パーソナライゼーションとレコメンデーション:機械学習を活用したAIは学習して出力を変化させることができるので、真にパーソナルな体験を創出できます。TV番組のストリーミングであれ保険商品の購入であれ、ユーザーの行動や好みを学習し、その人の見たいものだけを表示するのです。
AIとMLに関するElasticのソリューション
Elastic®では、アプリケーションにAIと機械学習をできるだけ簡単に取り入れられるようにするための取り組みを精力的に続けています。この目標を達成するために開発したのが、Elasticsearch Relevance Engine(ESRE)です。ESREは、検索技術を活用したAIアプリケーションを短時間で簡単に開発するうえで役立つ開発者向けツールセットです。ESREを使って開発できるものの具体例は以下のとおりです。
セマンティック検索:ESREでは、Elasticのキーワードマッチング機能に加え、ベクトル埋め込みと変換器モデルを利用できるため、ユーザーからのリクエストの背後にある意味を従来よりも深く理解できます。
関連性ランキング:従来型のキーワード検索、ハイブリッド検索(テキスト検索とベクトル検索を組み合わせたもの)など、業界最先端のランキング機能を、情報の分野を問わず利用できます。
ベクトルデータベース:ESREには、埋め込みの生成、ベクトルの格納、ベクトルの検索などの機能が用意されています。
データインジェストツール:このツールセットには、Webクローラー、データベースコネクター、サードパーティーデータ統合機能、APIを使ったカスタムコネクターなどが含まれています。
Elastic Learned Sparse EncodeR(ELSER):Elasticがトレーニングを済ませたスパースベクトル検索モデルで、セマンティック検索の結果の関連性を高めることができます。これは分野不問のモデルです。つまり、お客様のデータによる微調整は不要で、すぐにさまざまなユースケースに順応できます。
独自モデルの利用:サードパーティー統合やサードパーティーモデル(GPT-3および4など)を使用し、お好きなAIプラットフォームやAIモデルを利用できます。
このほか、Elasticは昨年、Securityとオブザーバビリティ向けにElastic AI Assistantをリリースしました。Elastic AI Assistantは、生成AIを使ってお客様とElasticの検索分析プラットフォームとをつなぐアシスタントツールです。アプリの状態やセキュリティ態勢について自然言語で質問を投げかけると、お客様の会社のプライベートデータに基づいた回答が得られます。
機械学習とAI:両者の明確な違いとは
AIと機械学習は、もはやSFの世界だけのものではなくなりました。今では、アートから医療まで、あらゆるものに大きな変化をもたらしつつあります。時として同義に感じられる両者ですが、明確に違う点もあります。AIは壮大で野心的なテクノロジーであり、それを裏で支えているのが機械学習なのです。
AIも機械学習も発展を続けており、その可能性にはまったく底が見えません。Elasticは、そんなAIと機械学習を誰でも使えるようにするための取り組みに力を入れています。強力な機能を備えたESREから、DevOpsやセキュリティアナリストの日々の負担を多少なりとも軽減するAIアシスタントまで、さまざまな製品やソリューションを通じて、人工知能と機械学習の発展や、両者による問題解決に貢献しています。
次にやるべきこと
準備ができたら、ビジネスのデータから得られるインサイトを活用するための次の4つのステップに進みましょう。
無料トライアルを開始して、Elasticがビジネスにどのように役立つのかを実感してください。
ソリューションのツアーで、Elasticsearch®プラットフォームの仕組みと、ソリューションがニーズにフィットする仕組みを確認してください。
2024年のテクニカルトレンド:検索と生成AIの進化の状況をご覧ください。
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本記事に記述されているあらゆる機能ないし性能のリリースおよびタイミングは、Elasticの単独裁量に委ねられます。現時点で提供されていないあらゆる機能ないし性能は、すみやかに提供されない可能性、または一切の提供が行われない可能性があります。
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