Customer 360の定義

Customer 360は、企業が自社の顧客データを最大限に活用するために採用する最新のアプローチです。さまざまなソースからデータを収集して統合し、それぞれのお客様について一元化された包括的なプロフィールを作成するなど、さまざまなことを行います。このプロフィールには、お客様の人口統計学的データ、購入履歴、やり取り、好みをはじめ、ビジネスに固有のその他あらゆるデータが含まれ得ます。

顧客データを一元化することで、お客様のことをより深く把握して、よりパーソナライズされたマーケティング、より上質なカスタマーサービス、そしてお客様に合わせてカスタマイズされた製品とサービスを提供できます。ビッグデータと高度な分析がものをいう今日の競争環境において、Customer 360は、データに基づく意思決定やお客様との強固な関係の構築に役立つので、導入する価値があると言えるでしょう。

Customer 360の仕組み

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Customer 360は、さまざまなソースとビジネス内のタッチポイントからデータを集約して統合し、一元化された包括的な顧客プロフィールを作成する仕組みになっています。

  • 最初に、顧客関係管理(CRM)システム、マーケティング自動化プラットフォーム、販売記録、金融取引、カスタマーサポートのやり取り、ソーシャルメディア、その他の関連する任意の場所が含まれる多様なソースからデータが収集されます。このデータには、人口統計学的データ、購入履歴、やり取りの記録などが含まれます。
  • 収集されたデータは、一元化されたデータベースやデータレポジトリで統合されます。この統合データが、それぞれのお客様のやり取り、好み、履歴などを1か所で総合的に確認できる、"何でも答える魔法の鏡"として機能します。これにより、お客様の全体像を把握するためのハードルが下がるだけでなく、データのサイロ化も回避できます。
  • 次に、データがクレンジングされ、その正確さと整合性が検証されます。このプロセスでは多くの場合、重複排除、エラーの修正、データフォーマットの標準化などが行われます。
  • この時点で、多くの企業が外部の人口統計学的データ、ソーシャルメディアでのアクティビティ、サードパーティのデータソースなどの追加情報で顧客データを補強します。これにより、それぞれのお客様の全体像をより包括的に理解できるようになります。
  • 統合データの分析には、高度な分析ツールとアルゴリズムが使われます。セグメント化、トレンド分析、予測モデリング、感情分析などを通じて、お客様の行動や好みに関する有益なインサイトがあぶり出されます。得られたインサイトは、提案のパーソナライズや、マーケティングキャンペーンのターゲット設定、カスタマーサポートにまで、さまざまなことに活用されます。
  • ひとたび実装されたCustomer 360が止まることはありません。Customer 360は継続的プロセスなのです。データはリアルタイムで絶え間なく更新されるので、顧客プロフィールは常に最新の状態に保たれ、それぞれのお客様との最新のやり取りと取引が反映されます。
  • データセキュリティとコンプライアンスを後回しにするわけにはいきません。Customer 360には、名前、住所、連絡先詳細といった個人を特定可能な情報を含む豊富な顧客データが格納されます。これらのデータは、侵害やID窃盗を防ぐために保護する必要があります。一般データ保護規則(GDPR)などのデータ保護法への準拠も欠かせません。企業にはデータ主体の権利、同意管理、データ最小化に対応してデータ保護関連の要件を満たすことが求められ、それができなければ多額の罰金を科せられます。

Customer 360が重要な理由

Customer 360は業務において重要な役割を果たします。それぞれのお客様のプロフィールとカスタマージャーニーの全体像が、分析され、区分され、最適化された状態で作成されるので、お客様にアプローチするべきタイミングと、その方法についてのスマートな意思決定が可能になるからです。Customer 360はすべてのお客様についての信頼できる唯一の情報源になり得るので、最適な顧客エンゲージメントが現実的なものになります。

お客様が何を求めているのかをもっと正確に把握できれば、お客様にとって一番有益な、または非常に関連性の高い製品を提案できます。反対に、お客様が興味を持っていない製品やサービスをそうとは知らずに紹介したり、あまりにも多くのタッチポイントで接触を図ってお客様に負担をかけたりして、お客様に嫌われてしまうこともなくなります。

Customer 360を実装する7つのメリット

Customer 360を実装することで、全体的なビジネス戦略とパフォーマンスに多方面のメリットがもたらされます。

  1. お客様に関する理解の深化
    Customer 360により、個々のお客様を包括的に把握できるので、お客様の好み、行動、現在のニーズに関する理解が深まります。
  2. カスタマーエクスペリエンスのパーソナライズ
    詳細な顧客プロフィールは、パーソナライズされたエクスペリエンスを提供するのに役立ちます。正しくパーソナライズすれば、お客様は自分の関心とニーズに気付いてもらえていると感じ、お客様とのやり取り、顧客満足度、顧客ロイヤルティが向上します。
  3. データに裏付けられた意思決定
    Customer 360によって作成された包括的なデータプロフィールは、重要なインサイトを集めて、マーケティング戦略、製品開発、リソースの割り当てについて情報に基づく意思決定を行うのに役立ちます。
  4. 効率性の向上
    よりスマートに、より負担なく働けます。リソースの割り当てを最適化し、お客様にとって最も重要な領域にエネルギーを集中させることで、自然とより効率的にビジネスを運用できるようになります。
  5. 競争優位の維持
    Customer 360戦略を正しく実践すると、絶え間なく変化する市場の状況とお客様の嗜好への対応力が上がり、競争上の優位性を維持できます。
  6. データコンプライアンスの最適化
    Customer 360により、お客様のデータを責任をもって合法的に扱えるようになるので、お客様からの信頼を維持しつつデータコンプライアンスを遵守するのが容易になります。
  7. 信頼の構築による顧客定着率の向上
    お客様に良質なブランド体験を提供することで、良好な長期的関係を構築したり、お客様に繰り返し利用してもらったりして収益を増やせます。

Customer 360実装の課題と制限

Customer 360の実装はすばらしいビジネス戦略ですが、それでも一定の課題と制限が伴います。

まず、さまざまなソースからデータを集めて、それを意味あるものにするというのが、一筋縄ではいかない作業です。顧客データはフォーマットが混在している可能性や品質に問題がある可能性があり、統合は簡単ではありません。コストも関係してきます。テクノロジーにも人員のトレーニングにも、多額の投資が必要になる可能性があるのです。変化に対する従業員の抵抗も、Customer 360導入の足を引っ張る要因になり得ます。

時間の経過とともに顧客データのボリュームが増えてくると、スケールアップ能力の重要性が次第に増してきます。この課題には、機械学習アルゴリズムで対処できます。膨大な量のデータを迅速に処理することで、ビジネスの規模が拡大し、データのボリュームが増えても、顧客の行動と好みの分析を継続できます。

正確さも重要です。データが不正確だと、そこから得られるインサイトも間違ったものになります。また、必要なデータが常にあるとは限りません。データサイロがしぶとく残り、それぞれのお客様の全体像を捉えるのが難しくなる場合があります。

Customer 360を最大限に活用するには、綿密な計画と徹底したデータガバナンスで、これらの課題を乗り越える必要があります。新しいシステムを段階的に実装し、継続的に監視することで、直面する可能性があるリスクや障壁を最小限に抑制できます。

顧客データプラットフォームとCustomer 360とCRMの比較:違いはどこにある?

顧客データプラットフォーム(CDP)、Customer 360、顧客関係管理(CRM)システムは、それぞれ異なるものですが、お客様の管理とデータの取り扱いに関するコンセプトには関連性があります。ここでは、その違いを簡単にまとめてみます。

顧客データプラットフォーム(CDP)
CDPのコア機能は、単一の包括的な顧客プロフィール(シングルカスタマービューまたはSCVとも呼ばれます)の作成です。マーケティングとカスタマイズされたカスタマーエクスペリエンスに関するデータの収集および管理のために使用されます。CDPは、リアルタイムでのデータの処理と分析のために設計されているので、お客様に関するインサイトをすぐに入手する必要がある場合に便利です。データの収集、統合、セグメント化を得意としていますが、お客様とのやり取りや関係の管理については、そこまで高性能ではありません。

顧客関係管理(CRM)
CRMは、お客様とのやり取りの管理、売上の追跡、カスタマーサービスの改善のために設計されたソフトウェアシステムです。通常は、連絡先情報、売上履歴、サポートのやり取り、コミュニケーション履歴などの顧客データが格納されます。CRMシステムは、カスタマーサポートなどを(たとえばチャットボットで)自動化するために、AIと統合されることも少なくありません。CRMは、もっぱらお客様との関係とやり取りの管理を対象にしている点で、CDPやCustomer 360よりも目的特化型と言えます。

Customer 360
Customer 360は、さまざまなソースのデータを統合してそれぞれのお客様の包括的な全体像を提供することを目的とする戦略的アプローチであり、必ずしも単一のプラットフォームやシステムには限定されません。データの収集にとどまらず、インサイトを活用してお客様との強固な関係を構築することを重視します。その目的を達成しつつ、ビジネスの成長を実現するために、Customer 360の戦略にはCDP、CRM、その他のシステムとテクノロジー(AI機械学習など)が盛り込まれることもあります。

Customer 360のユースケース

Customer 360には、さまざまな業界にわたる幅広いユースケースがあります。ここでは、よくある用途を少しだけ紹介します。

小売業におけるCustomer 360
小売業者は、Customer 360を使用して、それぞれのお客様の好み、行動、購入履歴を把握しておけば、パーソナライズされたショッピングエクスペリエンスを創出できます。Customer 360がもたらす広範な情報は、在庫管理の最適化にも役立ちます。お客様の購入パターンと需要を分析することで、適切な製品の在庫を適切なタイミングで確保しておけます。また、お客様がいる場所が実店舗、オンラインショップ、ソーシャルメディアなどのどこであっても、一貫性のあるサポートをスムーズに提供できます。

医療業界におけるCustomer 360
医療提供者は、Customer 360を使用して包括的な患者プロフィールを作成し、それをもとに患者ケアの連携の強化や、パーソナライズされた治療計画を実現できます。Customer 360は、予約スケジュール調整の効率化にも役立ちます。患者がリマインダーを受け取ったり、予約を更新したりできるようにすれば、当日に連絡もなく患者が現れないといった事態も減ります。患者に関する詳細なインサイトは、対象を絞り込んだ健康増進キャンペーンやイベントを計画したり、患者にこれから受ける検査や処置に関する情報を提供したり、その他のパーソナライズされた方法で予防的ケアを改善したりするのにも役立ちます。

金融サービス業界におけるCustomer 360
金融サービスでは、Customer 360でお客様の取引履歴と行動に異常や不審な点がないかを分析して、潜在的なリスクを特定したり、不正行為を検出したりできます。金融機関は、それぞれのお客様の目標、収入、支出パターン、リスク許容度をより詳細に把握できるので、よりパーソナライズされた金融アドバイスを提供することもできます。Customer 360には、お客様の包括的な記録と取引履歴が保存されるので、規制を順守したり、報告書の正確性を維持したりするのに役立ちます。

Customer 360を実装する方法

Customer 360を実装するには、複数の手順を戦略的に進める必要があります。ここでは、Customer 360がビジネスに適していると判断した場合に従うべき、いくつかの主な手順について解説します。

  • まずは、取引データ、カスタマーサービスへの問い合わせ、ソーシャルメディアでの発言、購入履歴など、お客様のデータをさまざまなソースから収集します。
  • 収集したデータを、CDPやデータウェアハウスなどの一元化されたシステムに格納してシングルカスタマービューを作ります。
  • この作業と並行して、CRMシステムや分析ツールといった必要なテクノロジースタックを実装しておく必要もあります。
  • 次に、重複の排除、エラーの修正、フォーマットの標準化を通じて、データのクリーンさと正確さを確保する必要があります。
  • これらのデータを処理し、それぞれのお客様とのやり取りから実用的なインサイトを入手するために、詳細分析用の実用的なダッシュボードや可視化機能、機械学習モデル、AIモデルを、使用する分析ツールと組み合わせます。お客様の情報の保護と、データ保護規制への準拠のために、セキュリティ対策を講じる必要もあります。
  • ここまで来たら、お客様の全体像を包括的にとらえる顧客プロフィールの作成に取りかかります。作成するプロフィールは、お客様の人口統計学的データ、過去のやり取り、購入履歴が1か所に集約されたものにする必要があります。このプロフィールは、タッチポイントを高度にパーソナライズしたり、やり取りをお客様ごとにカスタマイズしたりするための戦略を立てるのにも役立ちます。データ担当チームがこの手順を実行する際には、必ず営業、マーケティング、カスタマーサービスの担当者も巻き込むようにします。
  • システム内に堅牢な検索機能を組み込んでおくことも重要です。検索機能を統合しておけば、担当者は巨大なデータセットをあれこれ調べなくても、特定のお客様の情報にすばやくアクセスできるので、パーソナライゼーションと顧客エンゲージメントの質が向上します。
  • その後も引き続きデータの品質とエンゲージメント戦略の効果を監視し、必要に応じて調整する必要があります。 
  • また、お客様に関するデータの使用方法とプライバシー慣行について、お客様に対して可能な限り情報を開示することも重要です。

Customer 360とElasticsearch

顧客データを活用する準備はいかがですか。Elasticsearchを使用すれば、すべての顧客データを取り込んで検索したり、多様な変数のデータを相互に関連付けるリアルタイムダッシュボードを構築したりできます。顧客ベースに関する信頼できる唯一の情報源が現実のものになります。また、(Elastic製、自社製、サードパーティ製の)変換器モデルを使用してAI駆動のインサイトの分析と提供を行ったり、お客様向けに生成AIエクスペリエンスを構築したりすることもできます。

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Customer 360に関するFAQ

CRMとCustomer 360はどこが違いますか?

CRM(顧客関係管理)とは、お客様とのやり取り、カスタマーセールス、カスタマーサポートを管理するためのソフトウェアと戦略を指します。Customer 360は、さまざまなソースのデータを統合して、それぞれのお客様をCRM単体では不可能なレベルで包括的に把握するための広範な戦略に役立ちます。

シングルカスタマービュー(SCV)とは?

シングルカスタマービュー(SCV)は、複数のソースのデータを統合した、個々のお客様の一元化された包括的なプロフィールです。あらゆる方向からお客様について検討できるので、さまざまなタッチポイントにわたって、それぞれのお客様の行動と好みを理解できます。

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは何ですか?

カスタマーエクスペリエンス(CX)とは、お客様がブランドや企業と接触する際の全体的な印象と満足度です。初回認知から購入や進行中のエンゲージメントに至るまで、あらゆるタッチポイントとやり取りが含まれ、長期にわたってお客様のロイヤルティに多大な影響を及ぼします。


次にやるべきこと

準備ができたら、ビジネスでデータを活用するための次の4つのステップに進みましょう。

  1. 無料トライアルを開始して、Elasticがビジネスにどのように役立つのかを実感してください。
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